座位の安定と手を伸ばす動作の関係
療育やリハビリの場面でサポートの必要な子供達は、体幹が弱いから「〜ができない」といった内容の話を多く聞きます。
果たしてそうなのでしょうか?
もちろん療育場面でも体幹が安定しないために上手く活動に参加できていない子もいますが、体幹が弱いという前提で子どもを見ると、ほとんどの子がそのように見えてしまいます。
そのように見てしまうと体幹を鍛えれば良いといった単純な答えになってしまいます。
しかし、体幹が弱いと言われている子でも勢いよく走る子や、欲しいものなら重いものでも運べるような子も体幹が弱い・・・そんな疑問が起こりませんか?
さて、そこで体幹の安定性と物を探索する手の到達運動に関する論文から上記の疑問を考えてみたいと思います。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4338766/?utm_source=chatgpt.com
この論文は、生後3ヶ月から7ヶ月の乳児を対象に、座る姿勢の安定性が、どのように手を伸ばす動作に影響するかを調べています。
以下の2つの座位のサポートの条件で座位の獲得前後で体幹の活動と手の到達運動をを測定しています。
Aの条件は胸部と骨盤を支持し、Bの条件では骨盤を支持した設定で、Aは、姿勢が安定して状態の揺れが少なく、Bでは姿勢が不安定で乳児には姿勢の保持が難しい状態です。
体幹が安定した条件の方が到達運動も安定すると仮説し実験を行っています。
また体幹の安定がどの部分から発達するのかも調べています。
内容と結果を図にしてみました(図1参照)。

結果、体幹の揺れや手の到達運動の安定やなめらかさは、体幹が安定している方がと良いという予想通りの内容になっていました。
しかし、体幹の安定の順は、胸椎下部→上部→頭頸部→腰部の順となっており各パーツから安定してくることがわかります。
また、体幹が不安定な場合は、上肢の筋、上腕二頭筋と上腕三頭筋の同時収縮(手にギュッと力が入った状態)が起こるようです。
この解釈として、体幹が安定するから手を使うのも上手くなるのは当然の結果だと思います。
一方、体幹の安定する部位が胸椎周囲や頭頸部が先に安定する点、体幹が不安定な場合は、上肢の筋の活動が高かくなる点から考えると!
腰部より先に安定する部位は、手の到達運動と関係する部位であり、上肢も姿勢保持をするために活動を高めることから考えると体幹の活動は手の到達運動と相互の作用で発達することが考えられます。
本研究では体幹の安定は、手を伸ばす → 姿勢の制御が強化される → 姿勢が安定 → より洗練された手の動きが生まれるといった相互の強化ループから発達していくと述べています。
臨床においては、体幹が弱いといった一方向の目で子どもを見るのではなく、どの機能が上手く使えていないのか活動を観察し、その中から評価していくことが大事だと思います。

不安定な斜めのブランコに乗って大好きなぬいぐるみを取りに手を伸ばす
また、体幹を鍛えるのも大事ですが、何か欲しいものを取りに行くための手を伸ばす活動を様々な場面で設定して体幹と上肢の機能を相互に伸ばしていきたいですね!
