名詞と違い動詞は動く

 前回、日常の関わりの中で子どもは大人の「顔」よりも「手元」や「対象物」を優先して見て行動を理解している可能性を紹介しました。特に「手元」や「対象物」などを時系列で見て予測している点は興味深い点でした。では、動詞(走る・投げる等)は名詞と違って時系列を伴うものになります。よって動詞を判断する際、写真(静止)と動画(動的)では、脳の言語処理はどのように変わるのでしょうか。今回は、この問いに関係する研究を紹介します。

この研究は成人、平均年齢24歳の11名(うち女性7名)が参加しています。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2659666/

課題は、動作を見て動詞を言う課題(動詞命名)を fMRI で測定し、線画(静止画)動画(動的)を比較しました   (図1参照)。

動詞は、自動詞と他動詞を使用し、その差も比較いています(表1参照)。

結果 動画条件では、他動詞>自動詞の差(他動詞優位)がより強まる領域が報告された
動画条件では、静止画条件に比べて、他動詞>自動詞の差(=他動詞優位)がより大きく出る頭頂領域が報告されました。具体的には、右半球の上・下頭頂(BA7)から縁上回(BA40)、さらに中心後回へ広がる活動増加のまとまり(クラスター)が見られ、動画提示のときに他動詞の優位が増強していました。

他動詞のように項構造の密度が高い動詞ほど、前方・後方の言語ネットワークにまたがる活動が示された

他動詞(例:物を扱う動作)のように項構造の密度が高い動詞ほど、左下前頭回を含む前方領域に加え、左下前頭回を含む前方領域に加え、角回・縁上回など後方の言語領域にもまたがる活動が示されました(図2参照)。

まとめ 

動画条件では、他動詞>自動詞の差(他動詞優位)がより強まる領域が報告された
動画条件では、静止画条件に比べて、他動詞>自動詞の差(=他動詞優位)がより大きく出る頭頂領域が報告されました。具体的には、右半球の上・下頭頂(BA7)から縁上回(BA40)、さらに中心後回へ広がる**活動増加のまとまり(クラスター)**が見られ、動画提示のときに他動詞優位が増強していました。
※クラスター:隣接するボクセルで有意差がまとまって出た「活動のまとまり」。

他動詞のように項構造の密度が高い動詞ほど、前方・後方の言語ネットワークにまたがる活動が示された他動詞(例:物を扱う動作)のように項構造の密度が高い動詞ほど、左下前頭回を含む前方領域に加え、角回・縁上回など後方の領域にもまたがる活動が示されました(図2参照)。

以上より、他動詞>自動詞および刺激提示(動画/静止画)の違いに関連して、左下前頭回や角回・縁上回など言語処理と関連づけられる領域を含むクラスター、さらに頭頂葉の一部など道具・対象物操作と重なる領域での活動が報告されており、動画提示が他動詞(対象物操作を含みやすい行為)の処理をより引き出す可能性が示唆されます。

 前回に引き続き、動画のような時系列な情報の提示は療育にとっても重要ではないかと考えさせられる研究でした。

今回は、成人が対象の研究でしたが次は、子どもを対象とした研究も読んでみたいと思いました。

個人的には動画の提示が他動詞(対象物操作を含みやすい行為)の処理をより引き出す可能性ある事が印象的でした。両手での探索活動や手と対象物の観察といった、子どもの言語発達に関わる活動ともつながる示唆があるように感じます。

やはり「物の操作」は言語発達を促す上で重要なのだと改めて思いました。なと感じました。