2歳児のアイトラッキング研究
前回、動詞は時系列情報を含むため、静止画より動画の提示が有利になり得ることを成人の脳機能研究から紹介しました。では実際に、子どもは動詞をどの程度理解しているのか、そしてそれをどう評価できるのでしょうか。今回は、2歳前後の幼児を対象に「動詞理解を視線で測る」研究を紹介します。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6440303/?utm_source=chatgpt.com
本研究では、22〜24か月の幼児に、画面の左右へ2つの刺激を提示し、音声で「走ってるのはどっち?」のように問いかけました。名詞では静止画を、動詞では動画を用い、質問の前後でどちらを見る割合が変化するかを測定しています(図1参照)。

また評価基準として、静止画と動画の比較と共に、質問後に正しい方を見たかだけでなく、質問前から質問後に正解への注視がどれだけ増えたかで理解を推定しています。また、正解と誤りの目線の行き来も評価しています。
結果
動詞は、正解の映像を『ずっと見続ける』形になりにくく、もう一方の映像にも確認しに戻る
質問後に正解を見る傾向は確かに出ますが、動詞条件では映像が動き続けるため注意が揺れやすく、もう一方の映像にも確認しに戻りやすい。その結果、名詞課題ほど「正解側に視線が集まる」サインがはっきり出にくい点が見られました。
「理解あり」と判定される動詞は平均で約半分
本研究の「質問前より、正解の映像を見る割合が15%以上増えたら理解ありというルール」で見ると、2歳児では動詞の理解が示唆される試行は平均で約55%程度でした。動詞は名詞より難しいという臨床感とも整合します。
動詞は“すぐ”より“少し後”まで見たほうが理解が見えやすい
名詞は短い区間でも語彙との関連が出やすい一方、動詞は「聞いてすぐ一発で固定」というより、はじまり→途中→おわりの流れを見比べながら、じわっと決まるケースが混ざるためだと考えられます。
→ つまり臨床でも、動詞理解は時系列込みで捉えたほうが評価しやすい、という示唆になります。
動詞の「目線の行き来」は未熟さではなく、流れを確かめるための比較かもしれない
動詞は出来事が時間の中で展開するため、語彙が大きい子ほど、もう一方の映像も一度見て差を確認することがあります。動詞評価では“正解側を見続けたか”だけでなく、比較しながら理解を固める過程も含めて見ることが重要であると考えられます。
以上のことから、動詞は「1枚の絵」ではなく「短い動画」に近いものであり、幼児は、出来事を時間の中で追いかけながら“この動きが何か”を確かめていることが推測されます。
よって療育においても、動詞の学習には時系列(開始→展開→終結)込みで提示した方が理解しやすいのではないかと考えられます。
動詞は、時間の流れから生まれる言葉であり、幼児の視線研究は、動詞理解が「一瞬の当てっこ」ではなく、「流れを見て確かめる作業」が理解には必要であることを示していました。
療育場面でも動詞の学習は、動画はもちろんのこと、静止画カード1枚より「3コマ」「パラパラ」などの工夫をして“時系列”を用いていきたいですね。

