発音を聞き取るには口の運動が重要

 題名を見ると「口で聞く?何!それ」ってなりますよね。

私たちは会話は、耳で聞いて理解するのが普通だと思っています。

話を聞いて理解をする脳の部位は、一般的に側頭葉という頭の横の部分が主に働きます。

もちろん最近の脳機能の研究では、聴覚領域で聞く機能を全てを担うわけではなくネットワーク機能の主な役割が聴覚の場合は側頭葉にあり、他の領域と連携していることがわかっています。

今回は、その連携機能の話になります。

ここで発音に関して、1つ問題定義をしてみますね。

私たちは何故、聴力が悪くないのに外国語を聞き取るのが難しいのでしょう?

この答えが口の運動機能と関係があります。

私たち日本人の多くは、英語の「r」と「l」が聞き取りにくいと思われますが、練習して聞き取れるようになった人を対象にf-MRIで脳機能を測定すると側頭葉の活動に加え口の運動機能の場所が働いているようです。

この関係性について研究された論文を以下に紹介します。   https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3615351/

この研究は、20代の男性を対象に経頭蓋磁気刺激(TMS:Transcranial Magnetic Stimulation)を用いて実験しています。

TMSは各脳の機能を抑制することができます。

詳細は、音声を聞いている時の脳の反応が、口腔運動領域にTMSを用いて活動を抑える前と後の変化を脳波で記録しています。

また同様に手指の運動領域にTMSで活動の抑制した前後も比較しています。

実験に用いる音声は本来なら「da」と発音するところを「ba」や「ga」に変えたものを聞いてもらい、その違いに反応するかを調べています。

例えば「ラクダ」を「ラクガ」や「パンダ」を「パンガ」に変えた音声(原著とは異なります)を聞いてもらい、その時の反応を測定しています(図1参照)。

結果は、口腔運動領域の活動を抑制すると音声の変化の気づきも抑制される。一方、手指の運動領域は抑制しても音声の変化に気づくことは抑制されず脳波に顕著な変化がみられないことがわかりました。

つまりは、発音の変化の反応には口腔の運動領域が関わることが考えられました。

以上のことから専門的まとめると

発音の要素である母音や子音である音韻の処理は聴覚だけで処理しているだけだはない

                口腔の運動機能が音韻の知覚を支えている

                聴覚と口腔の運動機能は別々の領域でなく統合ネットワークである。

よって、発音を聞き取るには音声を聴く → 口腔の運動が動く → 音韻を知覚するといった構図が考えられます。

これらのことから英語の聞き取りには発音ができるようになることが重要なようです。

また臨床的には難聴で補聴器や人工内耳をつけたけど音韻の聞き取りが難しい子たちの口腔機能(構音動作)を促すことも1つの方法かなと思いました。

口腔機能を意識するために歯磨きの際に、歯ブラシで舌や歯の位置を確認しながら磨くのも発音の聞き取りに役立つかもしれませんね!