もともと、私たちは斜めの検出が苦手!
最近、読み書き障害に関する研究を見ていると、斜めの検出が苦手であるという結果を多く見ます。
確かに臨床現場では、カタカナの「ツ」と「シ」を書くのが難しいという子がいます。
カタカナの「ツ」と「シ」は3本の線で構成されていて角度の違いで表現されています。
つまりは斜めの角度の違いですよね。
なんで難しいの?気になって調べているとオブリーク効果(Oblique Effect)という言葉が出てきました。
オブリーク効果(Oblique Effect)とは?
斜めの線が“見えにくい”人間の脳の特性で、私たちの目と脳には、
「まっすぐ(縦・横)はよく見えるのに、斜めは見えにくい」
という特徴があります。
これを オブリーク効果(oblique effect) といいます。
たとえば、同じ長さの線でも
- 垂直の線 → 位置や傾きを正確に見分けやすい
- 水平の線 → 正確に感じやすい
- 斜め45°の線 → なぜか少し見づらい、傾きの違いが分かりにくい
という現象が起こるようです。
先に述べましたが脳の特性ということなので脳の視覚情報処理に着目してみます。
視覚情報は、脳の視覚野のV1領域に情報が入りますが、ここには垂直・水平・斜めの細胞が存在しています(図1)。

なのでV1領域では、斜め情報も処理できるようになっています。しかし、斜めが見えにくいのは、私たちの日常生活では斜めよりも垂直、水平の環境の情報が多くあることが影響しているようです。

日常生活にある建物や、その他の構造物は垂直・水平な要素が多く、街路樹なども真っ直ぐに生え、池などの水は水平で自然界でも垂直・水平の環境が多く、私たちは質然的に、これらの視覚情報を多く経験しています(図2)。
オブリーク効果の要因として、一説には、この斜めの経験の少なさが斜めの見えにくい要因だとされています。
斜めの検出が視覚やその他、身体による経験が統合されたものだと示す現象として錯視があげられます(図3)。

錯視が起こる、つまりは、網膜から視覚野におけるV1領域には、実際に見た垂直や斜めの情報が入っているにも関わらず、周囲の環境(斜めの線)によって違って見える(垂直が偏る)のは視覚情報以外の情報の統合が斜めの検出に関わっていることの現れだと解釈できます。
察しの良い方は、おわかりだと思うのですが、これら垂直・水平が多い環境の要因として重力の存在があり、その重力に対して使う身体の情報が斜めの検出に関与しているようです。

療育では、斜めに張り巡らせたロープに当たらないで進む課題(図4)などで楽しく斜めの検出を経験するのも良いでしょう!
実際に目で見た斜めの(視覚)情報と当たらないように動く身体の情報の誤差の検出や、それに対する工夫が斜めの検出力を高めてくれると思います。
読み書きの訓練の1つに用いると、子どもたちも楽しんで参加してもらえるかな。
次回は、斜めの検出と重力・身体といった情報の関係を調べた研究をお伝えする予定です。
