ことば・思考・運動を育てる準備
あかちゃんは生まれてから2歳までの間に、驚くほど多くのことを学びます。
寝返りやハイハイのような運動だけでなく、ことばの理解や発語、物の仕組みを考える力もぐんと伸びていきます。
では、この大きな成長はどこから始まるのでしょうか?
生後間もなくから仰向けで手足をバタバタ動かすジェネラル・ムーブメント(General Movement)という動きが見られます。その後4〜6か月頃、赤ちゃんはじっと自分の手を眺めたり、足をつかんだりして遊びます。
このような活動を最近では、単なる“可愛いしぐさ”ではなく、後の運動や言語の発達に繋がる活動として注目されています。
今回は、生後4ヶ月から見られる自分の身体の探索が後の言語発達とどのように関係するのかを調べた追跡研究を紹介します。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9589518
この研究では、正期産児23名、早産児29名の乳児を出生後 4〜6ヶ月頃から24ヶ月(2歳)までを追跡し、毎月または、一定間隔、発達指標を計測して身体探索 → 物体探索 → 運動・言語・認知の発達がどのように相互に影響し合うかを分析しています。
まず最初に育つのは自分の身体の理解

手を眺める ・足を口に持っていく ・体を触って確かめる
こうした行動は、自分で自分の体を触ることで身体の地図を育て、外界のものを操作する準備をしているようです。
次に物の探索動作が増える

微細運動(つまむ・回すなど) ・物の特徴を理解する力がつく
身体の地図が育つと、次に赤ちゃんは外界の物を振る・叩く・つかむなど、多様に扱い始めます。
この物体の探索こそが、運動・認知・言語の発達を伸ばすための原動力になるようです。
このような物の操作の経験が物の特徴の理解に繋がります。
物体の探索は「言葉の発達」にも影響する
物体を手で探索する頻度が高い子ほど、理解語彙(receptive vocabulary) ・産出語彙(expressive vocabulary)も多いという結果から、ハイハイや歩行そのものより、「手でどれだけ物を探索したか」が語彙の発達に影響するという点はとても興味深い結果でした。
また10〜12か月ごろの物体の探索が、初語の出現や語彙の増加と関係がある様です。
加えて物を大人に見せることが指差しにつながるなど一連の経験が、「物と名前を結びつける力」=語彙学習の土台になるようで、「よく物を使って遊ぶ子は、語彙の伸びが良い」という傾向は科学的にも裏づけられています。
この研究は、身体の探索の増加が身体地図を作り、その出来た身体(手)で物体の探索することが、物の理解を促し、その後の言語の発達(語の理解と表出)に強く影響することを示したものでした。
今回は、身体探索 → 物体探索 → 運動・言語・認知の流れで解説しましたが、本研究の解釈である各探索活動と運動・言語・認知は相互作用によって発達することを追記しておきます。
療育の視点から見て、探索活動をいかに引き出すかが、言語発達の基盤づくりとして非常に重要だと感じました。
