身体を動かし、見て、触って感じる経験

よく右と左が分からない子どもに、どのようにしたら教えられるにかと尋ねられることがあります。

しかし、子どもは、「右」「左」という言葉を覚えるだけで、左右を理解できるようになるわけではなく、その土台には、自分の身体を動かし、見て、触って感じる経験が必要になります。

この経験について詳しく書いた論文があったので紹介します。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8079995/

まず身体の左右を区別する準備は、胎児期から始まっているようです。胎児が手足を動かすと、筋肉や関節から「どこが、どのように動いたか」という感覚が脳に伝わります。

また、指吸いや子宮壁を触れたり蹴ったりすることで生じた感覚、つまりは運動感覚と触覚の組み合わせによって、少しずつ自分の身体の形や位置を表す「身体地図」がつくられていくと考えられています(図1参照)。

出生後は、ここに視覚が加わります。乳児が右手を動かすと、右手が動くのが見え、筋肉や関節からも動いた感覚が伝わります。物に触れれば、さらに触覚が生じます。「見る・動かす・触れる」という複数の感覚が同時に生じる経験を繰り返すことで、「この手は自分の手で、身体のこちら側にある」という身体表象が育っていきます。

特に興味深いのは、乳児が生後6~8か月頃まで、身体の中央線を越えて反対側の物へ手を伸ばすことが少ない点です。そのため発達初期には、右手は右側の空間、左手は左側の空間で使われることが多くなります。この規則的な経験が、身体の左右と空間の左右を結びつける基礎になると考えらています(図2参照)。

その後、身体の中央線を越えて手を伸ばしたり(例:左にあるコップを右手で取る)、両手で物を操作したり、はいはい・歩行などで全身を動かしたりするようになります。すると子どもは、手足の位置が変わっても「これは右手」「これは左足」と判断できるようになります。つまり、左右理解には、身体の位置が変化しても同じ身体部位として捉える力が必要なようです。

さらに幼児期になると、こうしてつくられた身体地図に「右」「左」という言葉が結びつきます。最初は「お箸を持つ手が右」など、自分の身体の機能を基に学習していくようです。

よって左右の理解は、言葉で教えても身体と結びつかないと難しいようです。

身体を動かす
→ 見る・触れる・感じる
→ 身体の左右を区別する
→ 「右・左」という言葉を身体機能と結びつける

という発達の積み重ねによって育っていくため、「右」「左」を教える前に機能的に上下肢が使えるか、まずは利き手が安定しているかは一つの目安になるでしょう。

手足を意識して遊ぶ活動としてロープに当たらないように自分で手足型の位置を配置しながら移動する遊びなんかがオススメです。

私、個人的には発達初期の右手は右側の空間、左手は左側の空間で使われる規則的な経験が、身体の左右と空間の左右を結びつける基礎になるという点が発見でした